計測器豆知識【オシロスコープ編】
波形更新速度が遅いと不具合を見逃す?デッドタイムと対策を解説

オシロスコープの波形更新速度とは?不具合を見逃す原因となる「デッドタイム」と対策

オシロスコープを選定する際には、周波数帯域やサンプリングレートだけで決めていませんか?

実は、周波数帯域やサンプリングレートと同じくらい重要なのが、波形更新速度です。

今回は、不具合解析の成否にかかわると言っても過言ではない、オシロスコープの波形更新速度について解説します。

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【トラブル事例で学ぶ】異常があるはずなのに波形に出ない?見落とされがちな“波形更新速度”

装置の評価や不具合解析をしていると、「たまに誤動作するのに、オシロスコープで見ると波形は正常に見える…」という状況に直面することがあります。

今回は、実際の現場で起こりがちな事例をもとに、なぜ異常波形を見逃してしまうのか、その原因と対策、そして不具合解析において重要な“波形更新速度”について解説します。

トラブル内容:誤動作するが原因が分からない…

ある技術者から「装置が誤動作するので回路の動作信号を確認したが、オシロスコープでは不具合となるような異常波形は測定出来ず、原因が分からない・・・」と相談を受けました。

現場で確認すると、以下のような状況が見られました:

  • オシロスコープで測定しても、波形に目立った異常は見られない
  • 発生頻度は低いとはいえ、誤動作は起きているので何らかの異常があるのは間違いない
  • 何処に問題があるのか分からず切り分けに時間がかかってしまい、工程に遅れが生じている

原因は「波形更新速度不足(デッドタイムが長い)」でした!

原因は 「波形更新速度不足(デッドタイムが長い)」 でした!

波形更新速度とは?

波形更新速度とは、オシロスコープが波形を1秒間に何回取得して、画面に表示出来るかを表す性能です。

単位は wfms/s(waveforms per second) で表されます。

補足:波形更新速度は、メーカーによっては波形取り込みレート更新レートとも呼ばれます。

波形更新速度の例

  • 100,000 wfms/s
    ⇒ 1秒間に10万回波形を更新
  • 1,000,000 wfms/s
    ⇒ 1秒間に100万回波形を更新

波形更新速度とサンプリングレートの違い

波形更新速度とサンプリングレートは、どちらもオシロスコープの性能を表す重要な指標ですが、意味は異なります。

波形更新速度

1秒間に何回波形を画面に表示できるかを表す性能です。
まれに発生する異常波形を見つけやすいかに関係します。

サンプリングレート

1秒間に何回信号をサンプリングするかを表す性能です。
波形をどれだけ細かく再現できるかに関係します。

つまり、波形更新速度は「見逃しにくさ」サンプリングレートは「波形再現の細かさ」に関わる指標と考えると分かりやすいです。

サンプリングレートについては、 初心者でも分かる!オシロスコープのサンプリングレートの選び方と注意点 で詳しく解説しています。

デッドタイムとは?

オシロスコープは、アナログ信号をA/Dコンバーターでデジタル信号に変換(サンプリング)し、信号を処理して画面へ表示する、という動作を繰り返しています。

1

波形の取得:信号をサンプリングしてメモリに溜める

2

処理・表示:データを計算して画面に表示する

この、波形を取得して画面に表示し、次の波形の取得を開始するまでの時間の事を「デッドタイム」といいます。

デッドタイムの間は、オシロスコープは次の信号が来ても、波形を取得することが出来ません。

もしデッドタイムの間に異常な波形が発生していたとしても、画面には表示されずに不具合を見過ごしてしまう原因となります。

多くのオシロスコープにとって、デッドタイムの占める割合は極めて高いと言えます。

製品にもよりますが、動作時間の99%以上がデッドタイムとなるオシロスコープも存在します。

波形更新速度が遅い場合

波形更新速度が遅い場合の波形

波形更新速度が速い場合

波形更新速度が速い場合の波形

波形更新速度が遅いと異常波形を見逃す理由

たまたま、デッドタイム中に発生したグリッチ(瞬間的に発生する短いノイズ状パルス)やラントパルス(規定電圧まで達しない不完全なパルス)といった異常な波形は、オシロスコープの画面に表示されません。

つまり波形更新速度が遅いと、稀に発生して不具合の原因となる異常波形を見逃してしまい、 「一見異常はないはずなのに、なぜかシステムが止まる」という原因不明のトラブルに陥ります。

デッドタイム中の異常波形は表示されないため、波形更新速度が遅いほど見逃しが起こりやすくなります。

波形更新速度が低くラントパルスを捕捉出来ていない

波形更新速度が遅くラントパルスを捕捉できていない波形

波形更新速度を低下させる原因

オシロスコープは、カタログ上最大の波形更新速度が常に維持されるわけではありません。

以下の設定をするとデッドタイムが伸び、波形更新速度は低下します。

1

レコード長を長くする

処理するデータ量が増えるため、計算に時間がかかります

*波形更新速度を上げようとしてレコード長を短くしすぎると、エイリアシングが発生する恐れがあります

2

解析機能をオンにする

自動計測、FFT(周波数解析)、マスクテストなどは負荷をかけ波形更新速度を遅くします

波形更新速度が速い事によるメリット

1

異常の早期発見

発生頻度の低い異常信号を捕捉する可能性が高くなり、時間がかかるデバッグを短縮することが可能です

2

正確な信号再現

より正確で詳細な波形を表示することが出来ます

3

応答性(レスポンス)の向上

更新が速いオシロはサクサク動きストレスが無く、テストに掛かる時間を削減出来ます

4

統計的な信頼性

短時間に多くの波形サンプルを補足できるため、測定値の信頼度が上がり、テスト時間を削減出来ます

まとめ:波形更新速度のポイント

  • 波形更新速度は、オシロスコープが1秒間に何回波形を表示できるかを表す性能
  • 波形更新速度が遅いと、グリッチやラントパルスといった異常波形を見逃してしまう
  • 波形更新速度が速いと、テスト時間の削減につながる
  • メーカーや機種によって波形更新速度は違うので、目的に合わせて選定する

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