オシロスコープの選定にあたっては、チャンネル数、周波数帯域、サンプリングレートなど、考慮すべき基本的な要素があります。
今回は、最も基本的な周波数帯域の選び方について、よくあるミスとその落とし穴を例に、漫画と実例でわかりやすく紹介します!

「信号が50MHzだから、オシロは100MHzで十分だろう」——
そんなふうに安易に考えてしまうと、思わぬトラブルにつながります。
実際、帯域選定を誤ったオシロスコープで測定すると、想定していた信号が本来の形にならないトラブルが起こります。
今回は、オシロスコープの帯域選定の解説と計算式をご紹介します。
計算式は覚えやすい「俳句」形式にしてみたので参考にしてみてください!

出典:キーサイト・テクノロジー
50MHzの波形を100MHzのオシロスコープで測定したところ、次のように表示されました。
▶矩形波が正しく表示されていない
▶立ち上がり時間が実際より遅く、波形も丸まってみえる
これはいずれも、波形が想定した形とは異なっている状態です。
以下は50MHzの矩形波を周波数帯域を変えて測定した例です。
立ち上がりが遅く角が丸まって表示される
出典:キーサイト・テクノロジー
立ち上がりが速く、エッジが明瞭で信号本来の形に近づく
出典:キーサイト・テクノロジー
オシロスコープの周波数帯域を決定する方法は、「測定したい信号(基本クロック)の5倍以上」とすることが一般的です。
(矩形波の場合は、10倍の周波数が必要です)
しかし、矩形波の立ち上がり(急峻なエッジ)を出来る限り正確に測定したい場合は注意が必要です。
というのも矩形波を含む様々な波形は、基本波+高調波が組み合わさって構成されています。
測定したい信号の5倍以上という考え方では、急峻なエッジに含まれている周波数成分を考慮出来ておらず、波形を正しく測定することが出来ません。
そのため、信号の立ち上がり時間を元に、オシロの周波数帯域を決定する必要があります。
信号の特性(立ち上がり時間)が分かっていれば、適切なオシロスコープの帯域幅を簡単な式で判断することができます。
※計算式はキーサイト・テクノロジーより出典
【計算式】
【計算例】※立ち上がり1nsの矩形波を測定したい場合
つまり、選ぶべきオシロスコープの帯域幅は1GHz/サンプルレートは4GSa/sなります。
オシロスコープを選定する場合、むやみに性能が高いモデル(周波数帯域が高い)を購入するのは、余りお勧めできません。
測定したい信号よりも、周波数帯域が高すぎるオシロスコープを使用すると、ノイズを拾う原因にも繋がるからです。
また周波数帯域が高くなれば、それだけコストもかかりますし、結果的に無駄な投資にもつながります。
しかし、オシロスコープの帯域不足は、正しい波形を表示できなかったり、不具合の誤判定を招きます。
そのため、測定したい回路の信号に対して適切な周波数帯域を持ったオシロスコープを選定する事が大切です。
メーカーによっては、購入後に周波数帯域をアップできるオプションを用意しているところもあるので、将来を見据えて選定することもポイントです。
✓オシロスコープの周波数帯域選定のチェックリスト
測定したい信号の基本周波数の5倍以上(矩形波は10倍)で周波数帯域を選定したか?
測定する信号の 立ち上がり時間(Tr) から必要な周波数帯域を選定したか?
測定したい信号に対して適切な周波数帯域のモデルを選んでいるか?
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▶波形が乱れる原因とは?プローブ補正の重要性
▶そのノイズ、距離のせいかも?グランド・スプリングで波形スッキリ
▶他社製プローブ使用は慎重に!仕様ズレに要注意
オシロスコープの基礎から学びたい方はこちらをどうぞ!
▶オシロスコープの基礎|基本知識から測定のポイントまでをやさしく解説
スグシルちゃんのひとことアドバイス
計算式が入ってこない…そんなときは、5・7・5の俳句調で覚えちゃえ!
① 信号帯域幅 = 0.5 / 信号の立ち上がり時間
立ち上がり・ゼロテンゴで・割ってみる
② オシロ帯域 = 2×信号帯域幅
信号の・帯域幅倍・オシロ幅
③ サンプルレート = 4×オシロスコープの帯域幅
オシロ幅・出したら四倍 ・サンプルレート
【担当者のつぶやき】
次のテーマは周波数計算かぁ~。どんなネタにしようか?そんなことを自宅で考えているときに子供たちが♪水平リーベ ぼくの船♪と謎の歌を口ずさんだのです。聞けば、元素記号を覚えるための歌で、授業で教わったのだそう。「これだ!」ということで今回の漫画に。語呂合わせやリズムのある言葉って覚えやすくていいですよね。でも「信号の・帯域幅倍・オシロ幅」だけめちゃくちゃ言いにくいんです。すみません。。。
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