漫画でスグシル!計測器豆知識【オシロスコープ編】
オシロスコープの帯域幅はどう選ぶ?周波数帯域の基礎と注意点をやさしく解説!

オシロスコープの選定にあたっては、チャンネル数、周波数帯域、サンプリングレートなど、考慮すべき基本的な要素があります。
今回は、最も基本的な周波数帯域の選び方について、よくあるミスとその落とし穴を例に、漫画と実例でわかりやすく紹介します!

▶スグシルちゃんと学ぶ!オシロスコープの基本知識編はこちら

若手技術者のしんくんが、SHINKAWAの作業服を着てオシロスコープの波形を見つめ、「信号は50MHzで、オシロスコープは100MHz帯域なのに波形が変だ」と首をかしげているシーン。測定帯域の不足による波形歪み・周波数特性の違いに悩む場面。

スグシルちゃんが宙に浮きながら、しんくんに「帯域幅は信号の立ち上がり時間から計算できる式がある」と説明している場面。しんくんは困った表情で「覚えられない」と反応。オシロスコープの周波数帯域と立ち上がり時間の関係を解説する導入シーン。

スグシルちゃんが着物衣装に着替えて正座し、習字をはじめる。「しんくんでも覚えられるように教える」と意気込むシーン。しんくんが「その格好…なに?」と驚いている。オシロスコープの帯域と周波数特性を基礎から学ぶ場面。

和風衣装のスグシルちゃんが、オシロスコープの帯域幅や立ち上がり時間についてしんくんに解説しているシーン。手振りを交えて説明するスグシルちゃんと、理解して驚くしんくんが描かれている。オシロスコープの帯域選定に関するポイントを学ぶ場面。

【トラブル事例で学ぶ】よくある帯域選定ミスとその落とし穴
 

「信号が50MHzだから、オシロは100MHzで十分だろう」——
そんなふうに安易に考えてしまうと、思わぬトラブルにつながります。

 

実際、帯域選定を誤ったオシロスコープで測定すると、想定していた信号が本来の形にならないトラブル起こります。

今回は、オシロスコープの帯域選定の解説と計算式をご紹介します。

計算式は覚えやすい「俳句」形式にしてみたので参考にしてみてください!

100MHzのオシロスコープで測定した波形が表示されている画面

出典:キーサイト・テクノロジー


トラブル内容:測定した信号が“本来の形“に見えない

50MHzの波形を100MHzのオシロスコープで測定したところ、次のように表示されました。

 

▶矩形波が正しく表示されていない

▶立ち上がり時間が実際より遅く、波形も丸まってみえる

 

これはいずれも、波形が想定した形とは異なっている状態です。


原因は「オシロスコープの周波数帯域が不足していたから」でした!

以下は50MHzの矩形波を周波数帯域を変えて測定した例です。

 

100MHzのオシロスコープで測定した波形が表示されている画面

帯域不足のとき 例:100MHzのオシロスコープで測定


立ち上がりが遅く角が丸まって表示される

 

 

 

出典:キーサイト・テクノロジー

 

適切な帯域のとき 例:500MHzのオシロスコープで測定

 

立ち上がりが速く、エッジが明瞭で信号本来の形に近づく

 

 

 

出典:キーサイト・テクノロジー


基本的な周波数帯域の考え方

オシロスコープの周波数帯域を決定する方法は、「測定したい信号(基本クロック)の5倍以上」とすることが一般的です。
(矩形波の場合は、10倍の周波数が必要です)

しかし、矩形波の立ち上がり(急峻なエッジ)を出来る限り正確に測定したい場合は注意が必要です。
というのも矩形波を含む様々な波形は、基本波+高調波が組み合わさって構成されています。
測定したい信号の5倍以上という考え方では、急峻なエッジに含まれている周波数成分を考慮出来ておらず、波形を正しく測定することが出来ません。
そのため、信号の立ち上がり時間を元に、オシロの周波数帯域を決定する必要があります。


立ち上がり時間から周波数帯域を求める

信号の特性(立ち上がり時間)が分かっていれば、適切なオシロスコープの帯域幅を簡単な式で判断することができます。

※計算式はキーサイト・テクノロジーより出典

 

【計算式】

  1. ①信号帯域幅 = 0.5 / 信号の立ち上がり時間
  2. ②オシロ帯域 = 2×信号帯域幅
  3. ③サンプルレート = 4×オシロスコープの帯域幅

 

 

【計算例】※立ち上がり1nsの矩形波を測定したい場合

  1. ①信号帯域幅=0.5/1ns500MHz
  2. ②オシロ帯域=2×500MHz1GHz
  3. ③サンプルレート=4×1GHz=4GSa/s

 

 

つまり、選ぶべきオシロスコープの帯域幅は1GHz/サンプルレートは4GSa/sなります。

 


まとめ:オシロスコープの周波数帯域は立ち上がり時間から逆算して選ぼう!

オシロスコープを選定する場合、むやみに性能が高いモデル(周波数帯域が高い)を購入するのは、余りお勧めできません。
測定したい信号よりも、周波数帯域が高すぎるオシロスコープを使用すると、ノイズを拾う原因にも繋がるからです。
また周波数帯域が高くなれば、それだけコストもかかりますし、結果的に無駄な投資にもつながります。

しかし、オシロスコープの帯域不足は、正しい波形を表示できなかったり、不具合の誤判定を招きます。
そのため、測定したい回路の信号に対して適切な周波数帯域を持ったオシロスコープを選定する事が大切です。
メーカーによっては、購入後に周波数帯域をアップできるオプションを用意しているところもあるので、将来を見据えて選定することもポイントです。

✓オシロスコープの周波数帯域選定のチェックリスト

  • 測定したい信号の基本周波数の5倍以上(矩形波は10倍)で周波数帯域を選定したか?

  • 測定する信号の 立ち上がり時間(Tr) から必要な周波数帯域を選定したか?

  • 測定したい信号に対して適切な周波数帯域のモデルを選んでいるか

他の「あるある」事例の漫画はこちら

波形が乱れる原因とは?プローブ補正の重要性
そのノイズ、距離のせいかも?グランド・スプリングで波形スッキリ
他社製プローブ使用は慎重に!仕様ズレに要注意
 

オシロスコープの基礎から学びたい方はこちらをどうぞ!

オシロスコープの基礎|基本知識から測定のポイントまでをやさしく解説

スグシルちゃんのひとことアドバイス

計算式が入ってこない…そんなときは、5・7・5の俳句調で覚えちゃえ!

 

 

① 信号帯域幅 = 0.5 / 信号の立ち上がり時間

 立ち上がり・ゼロテンゴで・割ってみる

 

② オシロ帯域 = 2×信号帯域幅 

 信号の・帯域幅倍・オシロ幅

 

③ サンプルレート = 4×オシロスコープの帯域幅

 オシロ幅・出したら四倍 ・サンプルレート
 

**他の漫画も読む

【担当者のつぶやき】
次のテーマは周波数計算かぁ~。どんなネタにしようか?そんなことを自宅で考えているときに子供たちが♪水平リーベ ぼくの船♪と謎の歌を口ずさんだのです。聞けば、元素記号を覚えるための歌で、授業で教わったのだそう。「これだ!」ということで今回の漫画に。語呂合わせやリズムのある言葉って覚えやすくていいですよね。でも「信号の・帯域幅倍・オシロ幅」だけめちゃくちゃ言いにくいんです。すみません。。。

●オシロスコープ仕様選定ページ
●用途別厳選オシロスコープセット

取り扱い製品、メーカー・デモ機のご依頼・その他お困りごと。まずはご相談ください

計測器スグシルを運営する新川電機は、課題解決の専門家です。
 機器選定、アプリケーション提案、エンジニアリングなどモノ・コト両面で一貫してサポートいたします。
●デモ機の貸出可能な製品も多数ございます。是非実際のご使用感をお試しください。
●多数のメーカーの販売実績がございます。掲載製品はほんの一部ですので、取り扱いの有無もお気軽にお問い合わせください。
アフターフォローの良さにもご好評いただいております。現在の課題を是非一度ご相談ください。